2019年の初詣と干支参り
2019年(平成31年)は平成時代として迎える最後の年。
偶然か必然か2019年は亥年で干支の「いのしし」は十二支の第12番目の干支。
つまり12年周期を締めくくる節目の年。
なかには初詣にその年の干支や生まれ年の干支を神さまや神使(しんし)として祀る神社に参拝するという人も少なくないと思います。
特に関西を中心に大切にされてきた初詣の古い習慣、慣わしとして根付いています。
今回は2019年(平成31年)の干支「亥(猪)」にまつわる神社や関わりの深い神さまについてご紹介します。
さっそく本題に進む前に干支の漢字、十二支の読み方で間違いやすい亥年の読み方をチェックしておきましょう。
亥年の読み方
亥は「猪(いのしし)」のことですから素直に「いのしし年」と読みたいところですが正しくは「いどし」と読みます。
では、本題に進んでいきましょう。
猪(いのしし)にまつわる神社と神さま
亥年の干支「猪」にまつわる神社、神さまといえば、護王大明神(ごおうだいみょうじん)です。
護王大明神は「猪の神さま」ということではなく、神さまが猪を眷属(けんぞく)とし「神使(しんし)」(神さまの御使い)にされています。
御使いとはいえ、神さま同様に人を超越する力を持っていることから眷属神(けんぞくしん)と言われることもあります。
護王大明神をご祭神とする神社は関西、西日本に点在していますが、中核となる代表的な神社は京都の護王神社です。
関東や東日本には護王神社の分社はありませんが、同様に猪に関係の深い神さま摩利支天(まりしてん)を祀る寺社が点在しています。
摩利支天は伊勢神宮の天照大御神(あまてらすおおみかみ)、出雲大社の大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)など神道の神さまではなく、仏教を守護する神さまになります。
では、次に護王大明神と摩利支天を祀るイノシシにまつわる関東、関西の神社や寺院をチェックしていきます。
関西でイノシシにまつわる神社
護王神社
正一位 護王大明神(和気清麻呂)は学問の神さま、天神さま(菅原道真)や東照大権現(徳川家康)などと同じく、その歴史的功績を称えられ天皇より神階(神さまの位)と神号(神さまの名前)を授けられた「人神(ひとがみ)」です。
ご祭神
和気清麻呂公命
(わけのきよまろこうのみこと)
和気広虫姫命
(わけのひろむしひめのみこと)
ご利益
足腰の健康・病気怪我回復
学業成就
清麻呂公といのししとの深い縁から、亥年生まれの人には特にご利益があるとされ、亥年生まれの守護神ともされています。
境内の手水舎には幸運の霊猪が鎮座しており、手と口を清めてから霊猪の鼻をなでると幸せが訪れると言われています。
また、護王神社では参道にも霊猪が狛犬の代わりに祀られています。
余談ですが、護王神社は2年前の2016年(平成28年)に現在の場所に祀られてから130年を迎え、翌年には平成の御修造を実施。
本殿の屋根などを新しく改修、翌年の2017年(平成29年)11月19日に本殿遷座祭が実施されました。
新しく本殿に遷座されて1年明けた翌年から特別な恩恵を授かるとされますので、亥年の2019年に参拝するには色んな意味で最適な神社です。
では、続いて護王神社とイノシシとの関わり、なぜ猪が神さまのお使いになったのかを調べてみましょう。
いのししとのご縁と宇佐八幡大神
結論から話すと、道中で刺客に狙われていた和気清麻呂公一行が豊前国(現在の福岡県東部)に至ると数百頭の猪が現れて彼らを守るように40kmほど離れた宇佐神宮まで導いた。
これがご縁で猪が護王神社の神使になったとされます。
もう少し深く話すと、僧でありながら政治にも介入していた弓削道鏡(ゆげのどうきょう)が皇位を狙って起こした事件がきっかけです。
道鏡は九州の筑前国に設置された地方行政機関「大宰府(だざいふ)」で大宰主神(だざいのかんづかさ)に就任していた「中臣習宜阿曾麻呂(なかとみのすげのあそまろ」という政治家と結託。
宇佐八幡大神から「道鏡を皇位に就かせたならば国は安泰である」とのご神託を受けたと称徳天皇にウソを奏上(申し上げる)します。
道鏡に好意的で譲位を考えていたとされる称徳天皇はご神託の真相を確かめるため、清麻呂公を宇佐八幡へ勅使として派遣。
その結果「ご神託は虚偽」であると報告しました。
これに激しく怒り、道鏡は逆恨みし、大隅国(現在の鹿児島県)に清麻呂公の足の腱を切ったうえで姉の和気広虫姫とともに流罪(るざい)されます。
都から大隅国へ向う道中で刺客に狙われていた清麻呂公を守りながら宇佐まで猪が導き、宇佐神宮に詣でると傷つけられた脚が回復するなど数々の奇跡がおきたと伝えられている。
余談ですが、称徳天皇が崩御されたのちに光仁天皇によって清麻呂公と広虫姫は許されて都へ呼び戻されます。
また桓武天皇の時代になると平安京の建都を天皇に進言し、現在の京都の基礎を築かれました。
アクセス
京都府京都市上京区烏丸通下長者町下ル桜鶴円町385
電車の場合
地下鉄烏丸線
丸太町駅下車 徒歩7分
バスの場合
京都市営バス 51系統
烏丸下長者町バス停下車
関西で干支参りと言えば、例年ご案内している京都の下鴨神社ですね。
下鴨神社
下鴨神社は(賀茂、鴨、加茂)神社の総本宮で正しくは「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」といいます。
京都では下鴨神社の干支参りが浸透していることから初詣にその年の干支の神さまを祀る境内社の言社にお参りする人も少なくありません。
言社は十二支それぞれを守護する神さまが祀られ、亥年は「大物主命」が守護神だとされています。
亥年の大物主命は出雲大社の主祭神、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の別名で言社7つそれぞれの異名ごとに違った性質があり、亥年は物を司り、力を与える神さまとされています。
アクセス
京都府京都市左京区下鴨泉川町59
電車の場合
京阪電車・叡電
出町柳駅 徒歩12分
バスの場合
京都市営バス
下鴨神社前バス停下車
京都の護王神社の他にも和気氏の発祥地である岡山や鹿児島、福岡にも清麻呂公をお祀りしている神社があります。
和気神社(岡山・鹿児島)
岡山の和気神社は和気清麻呂生誕地で和気氏発祥の地であり、ご祭神の鐸石別命(ぬてしわけのみこと)は、和気氏の氏神。
鹿児島は流刑地という縁から和気神社が創建されている。
両神社ともに和気清麻呂命、和気広虫姫命も祀られており、亥年の干支参り、初詣には最適な神社といえます。
また、護王神社と同じく霊猪が狛犬の代わりに祀られ、お守りや絵馬にもイノシシが描かれています。
住所
岡山県和気郡和気町藤野1385
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田3986
足立山妙見宮 御祖神社(福岡)
天照大御神よりも先に地上に姿を現した神さまとされる造化三神(天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神)を主祭神にとして祀る神社。
あわせて鐸石別命、和気清麻呂公命もお祀りされていますので、こちらも亥年の干支参り、初詣に適しているのではないでしょうか。
足立山妙見宮は和気清麻呂と諸説あるいのししとの関わりを伝える伝承のひとつの舞台で、猪が宇佐に導いたのち宇佐神宮の神さまのお告げを受け、足立山の山麓に湧く霊泉に入ったところ数日で足の傷が完治したとされている。
また、足立山の山頂で天下泰平を祈願したところ翌年に国家は安定、自らの流罪もとかれて都に呼び戻され、入れ替わるように道鏡が流罪によって現在の栃木県あたりに流刑されるなど、大きな恩恵をいだたきました。
これに感謝し、足立山に妙見宮を創建されたと伝えられています。
住所
福岡県北九州市小倉北区妙見町17-2
つづいては関東で亥年の干支参り、初詣におすすめの場所をご紹介します。
関東でイノシシにまつわる寺社
上野の摩利支天 妙宣山 德大寺
師走、お正月準備に多くの買い物客で賑わう東京・上野アメ横(アメヤ横丁)にある日蓮宗の仏教寺院。
ご本尊は「開運大摩利支尊天」で聖徳太子の御作(ぎょさく)とされています。
摩利支天は仏教の守護神とされる神さまで猪を眷属として従えており、上野徳大寺の開運大摩利支尊天像はイノシシの背にお立ちになっています。
さらに金沢の宝泉寺(ほうせんじ)や京都建仁寺(けんにんじ)の禅居庵(ぜんきょあん)とならび日本三大摩利支天に数えられ、本堂に掲げられている「威光殿」の文字は吉田茂元総理から本堂復興の記念として贈られたもの。
上野アメ横の徳大寺は日蓮宗のお寺なので参拝、お参りの仕方は二礼二拍手一礼ではありません。
1.そっと胸の高さで手を合わせ日蓮宗の題目(だいもく)の「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を3回唱える。
2.心の中で自分の名前と住まいを告げてからご先祖の成仏と日々の感謝を伝えるから自分の所願成就を祈る。
3.「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を3回唱える。
注意点
上野の摩利支天、徳大寺は神社ではなく仏教寺院のため年末年始や初詣などで参拝するときに神式の「二礼二拍手一礼」でお参りしてはいけません。
また、古くなったお札やお守りを初詣や参拝のついでに返納する場合に神社でいただいたお札やお守りは納めることが出来ませんので注意しましょう。
アクセス
東京都台東区上野4丁目6番2号
電車の場合
JR山手線・京浜東北線「御徒町」駅から徒歩2分
東京メトロ銀座線「上野広小路」駅から徒歩2分
都営大江戸線「上野御徒町」駅から徒歩2分
京成本線「京成上野」駅から徒歩7分
車を利用の場合には専用駐車場を完備していないため近隣の有料駐車場を利用することになります。
亥の日
1月 | 2日 | 14日 | 26日 | 7月 | 1日 | 13日 | 25日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2月 | 7日 | 19日 | – | 8月 | 6日 | 18日 | 30日 |
3月 | 3日 | 15日 | 27日 | 9月 | 11日 | 23日 | – |
4月 | 8日 | 20日 | – | 10月 | 5日 | 17日 | 29日 |
5月 | 2日 | 14日 | 26日 | 11月 | 10日 | 22日 | – |
6月 | 7日 | 19日 | – | 12月 | 4日 | 16日 | 28日 |
平成最後の年となる2019年、德大寺の初亥大祭は1月2日になります。
次は視点を変えて猪の目についてをチェックしましょう。
ハートの猪目
昨今、有名になった神社やお寺にあるハート型の装飾で待ち受けにすると恋愛成就するなどと噂される「猪目」はその形が猪の目に似ていることから名付けられたといいます。
この猪目が神社や寺院に装飾されている理由は、火災除けだとされています。
その理由は大きく2つあります。
1つは、山火事が起きたとき山から真っ先に逃げる動物がイノシシだとされるから。
もう1つは「亥」は陰陽五行説で「水」にあたるため火災を逃れるとされているから。
この猪目が神社や寺院の装飾に用いられるのはそう言った理由があります。
その他にも、亥の月の亥の日から火を使い始めると安全だとして「炉開き」「炬燵開き」をする地域もあるようです。
亥にまつわる地域の習慣といえば、現在でも西日本を中心におこなわれている「亥の子祝い」を知っていますか?
亥の子祝いと亥の子餅
「亥の子(いのこ)祝い」または「亥の子祭り」という習慣で十二支の亥の月にあたる旧暦10月の亥の日、亥の刻に亥の子餅または玄猪餅(げんちょもち)」を食べるというものです。
これは猪が多くの子どもを産み繁殖力が強いことから子孫繁栄につながるとして「亥の子餅」を食べ、田の神の恵みに感謝し無病息災を祈るもの。
平安時代には宮中においても亥の子餅を群臣に下賜していたといいます。
関東の人には馴染みのない「亥の子餅」ですが、有名は源氏物語の光源氏と紫の上の巻に亥の子餅が登場する場面もあるほど。
亥の子餅のレシピも地域により違いがありますが、古い文献などでは「大豆、小豆、大角豆、胡麻、栗、柿、砂糖の七種を入れた餅と記されています。
さらに江戸時代には亥の月の最初の亥の日を「玄猪の日」と定めていた記録もあります。
ちなみに亥の刻は現在の時間で21時~23時頃とされる。
また、同じく亥の月の亥の日、亥の刻に田の神、山の神にお参りする亥の子参りという慣わしが残る地域もあるといいます。
2019年の干支は12年に一度の亥(猪)年で亥の月、亥の日、亥の刻という特別な年の「亥の子祝い」ということになります。
このように亥の月の亥の日、亥の刻には関西、近畿から西日本ではさまざまな習慣が残っています。
しかし、実は北関東から甲信、東北地域でも似たものとして旧暦の10月10日に十日夜(とおかんや)という田の神に感謝をする収穫の祭りを今も継承している地域もあります。
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